チョコレートの歴史ものがたり-1

チョコレートの歴史は、紀元前2000年頃にまでさかのぼると言われています。実に、約4000年におよぶ悠久の歴史です。
「うっそー」って思いませんか? 私には、とっても大きな驚きでした。 だって、チョコレートの歴史と言われても、せいぜいフランス革命の頃の貴族の令嬢が気取った様子でボンボン・ショコラを口に放り込む…みたいな様子しか想像できなかったから。
ところがチョコレートには、わたしの想像を遙かに超えた、ドラマチックな歴史がありました。

むかしむかし、チョコレートは飲み物だった

南北アメリカ図

古代文明とチョコレート

 ヨーロッパの香りが色濃いチョコレートですが、その歴史は、実は大西洋を隔てた中米(メソアメリカ)、現在のメキシコ、グアテマラ周辺からスタートします。メソアメリカはカカオの原産地。そして、オルメカやマヤ、トルテカ、アステカといった古代文明が輝きを放った場所でもありました。密林の中にピラミッドがそびえる巨大神殿都市を捨て去ったマヤ文明、そして、神話にとりつかれたためにスペインの侵略を許し、繁栄のさなかに滅んでいったアステカ文明…。 独特の宇宙観や宗教、高度な天文学や暦、建築技術、絵文字をもつ文明は、神秘に満ちています。 チョコレートの歴史の大部分は、そうしたメソアメリカの文明によって育まれてきたのです。ちょっとロマンを感じませんか?
 もともと自生していたカカオを栽培化し、チョコレートを発明したのは、マヤ族の遠い祖先。 紀元前1世紀頃には、すでに「カカオ(発音はカカウ?)」という言葉も生まれていたようです。

チョコレートは飲み物だった!

 かつてチョコレートといえば、飲み物でした。固形の食べ物になったのは、実はほんの170年ほど前のこと! メソアメリカ時代はもとより、ヨーロッパに伝わってからしばらくの間も、チョコレートは飲み物だったのです。「ふ〜ん」って、今、ココアのようなものを想像して納得したアナタ、それがちょっと違うんですねー。
 当時のチョコレートは、「カカワトル(カカオの水)」と呼ばれ、カカオ豆を乾燥させたものを石臼で挽いて水を加え、泡立てたもの。とろみがつくようにトウモロコシの粉も加えられていたので、どろっとしていたようです。しかも、甘いどころか、辛かった! メソアメリカの人々は、唐辛子やチリなどのスパイスをたっぷり加えて飲んでいましたから。私たちが思い浮かべるチョコレートとは、似ても似つかぬ代物ですが、さてさて、いにしえの辛いチョコレート、どんなお味だったのでしょう。
飲んでみたい人、手をあげて!………あれ、いませんか?? 

チョコレートは“泡こそ命”

 アメリカのブリンストン大学が所蔵するマヤの古い時期の壺に、チョコレートを作る女性の絵が描かれています。その絵の女性は、立ち上がって、手に持った円筒形の容器から、床に置いた別の容器へと注意深くチョコレートを注ぎ入れています。なぜ、わざわざ立ち上がって移し替えているのかって? それは、チョコレートを泡立てるため。マヤやアステカの人々は、泡こそがチョコレートの魅力と考えていました。このプロセスは、美味しいチョコレートづくりに欠かせないものだったのです。ざらざらした触感を泡でやわらげていたのかもしれません。
 アステカの言語で書かれた文献に、「飲むときは大きな口を開け、泡を消しながら少しずつ口に入れる」という記述があるそうです。なんだか飲みにくそう。また、マヤ語には、「チョコレートの泡」を意味する「ヨム・カカオ」をはじめ、チョコレートの“泡”に関する単語がいくつもあります。
 容器から容器へ移して泡立てるという伝統の製法は、16世紀、入植してきたスペイン人たちが別の泡立て道具を使い出すまで続きました。

 
チョコレートは、最強の栄養ドリンク

 「一杯飲めば、他に何も食べなくても一日中歩くことができる」と言われるほど、チョコレートは滋養強壮に優れ、疲労回復効果もあるとされていました。また、様々な薬草類を組み合わせることで、歯痛、解熱、止血、消化不良などに効く万能薬として利用していたようです。マヤの人たちは、カカオから採れるカカオバターを火傷の治療や日焼け止めにも使っていたそうな。 実は現在でも、カカオバターは、コスメ製品の原料として利用されているほどです。
 しかし、高価なカカオは庶民には高値の花。贅沢品のチョコレートを毎日飲むことができたのは、王侯貴族や上流階級の人々だけでした(庶民が手軽に口にできるようになるのは19世紀のこと)。彼らは豪華な食事の最後にチョコレートを飲んでいたようです。花を入れたチョコレートやバニラ風味のチョコレートなど、さまざまなレシピが残されていることからも、彼らにとっては、チョコレートは栄養剤であるとともに、贅沢なデザートでもあったのでしょう。毎日3万2000粒のカカオを宮廷で消費していたという資料も残されています。チョコレート約640杯分ですって。
 上流階級以外でチョコレートを口にできたのは、戦士と交易商人くらいだったようです。交易商人になぜ許されたかというと、彼らもまた、貴重な荷を守るために武装し長距離を遠征するなど、ある意味で戦士だったからでしょう。アステカの頃には、カカオをすり潰して板状にしたものも作られ、遠征軍の食料として利用されていたとか。これはまさにインスタントチョコレート。お湯を注いで飲んでいたみたいですよ。アステカ帝国は強大な軍事力を持っていたと伝えられていますが、もしかしたらその力は、チョコレートによってもたらされたものかもしれません。

 
チョコレートは神への捧げ物

 たくさんの実をつけるカカオは、メソアメリカの人々にとって豊穣のシンボルであり、チョコレートは、神への捧げ物として儀式で重要な役割を果たしていました。上流階級では、結婚式でチョコレートが使われることもあったようです。こうした儀式の様子は、残された絵文字から窺い知ることができます。
(マヤ文明には独特の絵文字文化があり、それはそれは、とてもユニークで可愛らしい絵なので、ぜひ見てほしい!)

贋カカオも出現! 実はカカオは通貨だった!

 メソアメリカ地域では、古くから交易がとても盛んに行われていました。それを支えていたのが、カカオです。12世紀頃、「商売」といえばカカオ取引を指したといわれるほど、カカオはそれ自身が貴重な交易品でした。上流階級の栄養ドリンクであり、薬でもあったのですから当然でしょう。
 しかしそれだけではありません。実は、カカオは通貨としても使われていたのです。 メソアメリカでは、重さの単位がなかったと言われています。ですから、カカオ豆も重さで量るのではなく、小さな1粒1粒を数えて取引されていました。カカオ豆を数える専門職もいたようで、「1日に20万個のカカオ豆を数えられる」という異才を放った人物の記録も残されています。
 貨幣価値は時代や地域によっても変わりますが、1545年のメキシコの市場の記録によれば、よく太った雌の七面鳥一羽は上質のカカオ100粒と取引されたとか。ちょっと笑えたのが、しなびたカカオなら230粒(120粒と書かれた文献もあり)と、しなびている場合の値段設定まであったこと。人々の暮らしにほんとうに深く浸透していたんだなあと感じました。さらに、七面鳥の卵1個は3粒、雌鳥は40粒、若鶏は15粒、野ウサギは100粒という値段だったそうです。また、カカオ豆はお給料として支払われることもあったようです。
 見た目はただの豆とはいえ、立派な通貨。となれば、贋金ならぬ「贋カカオを作っちゃおう」と考える悪い輩が出てくるのも必然といえば、必然でしょうか。かなり精巧な贋物が作られたようですよ。

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