テオブロマ 土屋公二のチョコレート
土屋公二著
出版:ネコ・パブリッシング
21歳で渡仏。三つ星レストラン「ヴィヴァロア」をはじめ、「ダロワイヨ」、「ピエールモデゥイ」などの名店で研鑽を重ねる。チョコレートの修行を積むなかでチョコレートの魅力に目覚め、ショコラティエを志す。1993年、「ミュゼ ドゥ ショコラ テオブロマ」本店をオープン。
受賞実績/シャルルブルーストコンクール:銀メダル、アルバジョンコンクール ビエスアーティスティック 銀メダル、銅メダル
レシピが紹介されているボンボン・オ・ショコラの数々、そしてチョコレートのデザート…。どれも目移りする美しさ。写真のチョコレートのつやの美しいこと。美しいだけでなく、写真を見るだけで食べたくなる。
この本の魅力は、そうしたレシピだけではありません。トップショコラティエが披露する基礎テクニック。これです。基礎のテクニックといいながら、写真から、プロのテクニックを垣間見ることができ、それだけでうっとり。うわー、こうやってこの模様を作るんだーとか、そんなやり方があるんだーとか、驚きと楽しさと。ケーキの飾りに使うスパイラルやチューブが特におもしろかった。エアパッキングで意外なデコレーションを作ったり、工夫次第でいろいろなものができるんだな、と。ショコラティエやパティシエをめざす人におすすめの本。そうじゃなくても、チョコレート好きなら楽しめる。条件反射的にチョコレートを買いに走りたくなるかも。
斉藤美穂が訪ねる『世界のショコラ・スペシャリテ』
斉藤美穂著
出版:文化出版局
著者は、パリのジャン-ポール・エヴァン氏の指導を受けるなど、多くの三つ星レストランや五つ星レストランで研修を積んだのち、現在は、乃木坂(東京)のサロンで、フランス菓子とフランス料理の教室を主宰。他に、『フレンチ・ショコラ』『斉藤美穂の生チョコレート』(どちらも文化出版局刊)の著書もある。
「この本は、私のチョコレート交友録です」と著者がエピローグに書いているとおり著者と交流のある、フランスでも有名なシェルやパティシエ、ショコラティエの手によるチョコレート菓子のオリジナルレシピ(この本のために作られたもの)が紹介されています。しかもその面々たるや、元は宮殿だっという5つ星ホテルの『オテル・ド・クリヨン』のシェフとパティシエをはじめ、著名なショコラティエ、ジャン-ポール・エヴァン氏(素敵なおじさま〜!)など、豪華な名前がズラリ。厨房での写真やインタビューをからめた人物紹介から、彼らの素の表情が見えてくるのも楽しい。
さらに、シェフ仲間との交流を通して生まれた著者のオリジナルレシピ、著者から友人たちへのチョコレートの贈り物レシピも紹介されています。登場するチョコレート菓子は、どれも独創性にあふれ、見ているだけで幸せな気分。お菓子作りが好きな方なら、世界のトップパティシエたちのレシピに挑戦できるなんて、それだけでワクワクするのでは? 料理が苦手な私は、レシピはそっちのけで、華麗なお菓子の写真を見て、ひたすら「食べた〜い」を連発してましたけど。
チョコレート パーフェクトブック
加藤千恵著
出版:講談社
テレビや雑誌で活躍する一方で、東京・自由が丘の自宅で洋菓子教室を主宰。お菓子作りに関する著作多数。
実際にお菓子作りを教えている著者だけに、チョコレートづくりの細かい点が手取り足取りていねいに説明がされている。特にテンパリングのやりかたは、細かな注意点が書かれていて、初心者にもわかりやすい。初心者でも、作ってみようかなと思わせる基本の作り方と、それにほんのちょっと応用を利かせたレシピがたくさん紹介されている。そんなに難しそうじゃないのに、出来上がりは、お店で売っているチョコレートみたい! 誰かにプレゼントしたり、誰かを呼んで、はい、どうぞって出したくなるようなものばかり。写真もとてもきれいです。
チョコレートの真実
キャロル・オフ著 北村陽子訳
出版:英治出版
100円の板チョコレートを手軽なお菓子として何げなく口にし、ときには“ちょっと贅沢”な気分で1粒300円の高級ショコラを堪能する。
そんな私たち日本人には想像もつきませんが、広く世界を見渡せば、同じ時代を生きていながら、チョコレートを食べたことも、見たこともない人たちがたくさんいます。
そのなかには、カカオ農園で、一日12時間も14時間も、過酷な労働をさせられる幼い少年たちも。彼らは、自分たちが収穫するカカオがどんなに甘くとろける魅惑のお菓子を作り出しているか、知らないのだといいます。毎日の食事でさえ満足に与えられない生活では、チョコレートは、まさに【神々の食べ物】という遠い存在でしょう。
この『チョコレートの真実』という本に書かれた内容は、チョコレートを愛する人にとっては、できれば知りたくない真実かもしれません。
巨大なチョコレート企業とカカオ産出国を舞台にした、権力とお金、暴力というカカオをめぐる“闇”の一面。その闇によって虐げられるカカオ農園の労働者たち。
わたしたちが安価に手に入れるチョコレートには、甘く幸せな魅力だけでなく、苦く哀しい真実もあるのだということが、この本には書かれているのです。
カカオ生産者の哀しい境遇については、参考図書のページで紹介した『チョコレートの歴史』(ソフィー・D・コウ&マイケル・D・コウ著)にも書かれています。
『チョコレートの歴史』が主に中南米の悲劇を取り上げていたのに対し、この『チョコレートの真実』では、中南米の後にカカオ最大の生産地となった西アフリカ、特にコートジボワールの生産者の底なし沼のような実態をリポートしています。
「カカオ豆を収穫する手とチョコレートの包み紙を開ける手の間の溝」を埋めるべきだという、この著者の願いを心のどこかに刻んでおかねばと思うのでした。
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